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特定の財産を渡す「相続させる旨の遺言」 とは?メリットと注意点|不動産相続の相談窓口・株式会社マトリックストラスト

不動産相続の相談窓口コラムVOL.75

特定の財産を渡す「相続させる旨の遺言」
とは?メリットと注意点

「○○の土地・建物を長男に相続させる」など特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言書を作成するケースがあります。これは財産を相続させたい人へ財産を渡すことができる方法です。今回はこの「相続させる」旨の遺言について解説します。

❏「相続させる」旨の遺言とは

すべての財産について、それぞれ特定の相続人に「相続させる」旨の遺言書をのこしておけば相続人は原則として遺産分割協議が不要です。また相続財産が不動産の場合には、その不動産の相続を指定された相続人が、単独で名義変更を行うことができます。遺産分割協議を行う場合には、各相続人の公的書類などが必要となりますが、手続きが比較的スムーズに行えるという点はメリットです。ただし相続人の「遺留分」が侵害されている場合には、遺言の効力自体は維持されますが、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求される可能性があります。また特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、2019年7月1日に施行された改正民法から「特定財産承継遺言」と呼ばれるようになりました。

民法(特定財産に関する遺言の執行)第千十四条
2遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)

民法1014条2項では、特定財産承継遺言があった場合、遺言執行者が対抗要件を備えるために必要な行為(登記手続きなど)を行うことができると定められています。今回の改正では、特定財産承継遺言があった場合にも、その相続人の法定相続分を超える部分は、登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないこととされました。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない
出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)

こちらは、「遺言の有無や内容を知らなかった債権者などの利益を害する」「登記制度や強制執行制度の信頼を害するおそれがある」という点から創設されたものです。例えば不動産の場合、法定相続分を超える権利取得について登記を備えていなければ、第三者から権利取得を主張された場合に対抗できないことがあります。財産を相続した場合は、速やかに登記の手続きを行いましょう。※2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象となります。

❏ 「相続させる」旨の遺言は法的に有効?

この「相続させる」旨の遺言は、「特定の相続人に対する『遺贈』に該当するのか」「単純に『遺産分割の方法』を指定したものなのか」ということが過去に争われていました。ただし最高裁の判決で、このような遺言は「遺産分割の方法」を指定したものだとする判断がなされています。

裁判要旨
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである
出典:裁判所

このように現在では「特段の事情」がない限り遺産分割の方法が指定された遺言と解釈されますが、先の民法改正によって第三者への対抗要件が変わった点だけは注意が必要です。

❏ 「遺贈」との違い

「相続させる」旨の遺言は、相続人に対してしか使うことができません。相続人以外の人に財産を遺したい場合は「遺贈する」旨の遺言を使うことになります。不動産の単独登記申請(令和5年4月1日施行)や農地の許可(従前からの取扱い変更)については、いずれも相続人に対する遺贈であれば「相続させる」旨の遺言との
差はほぼなくなっています。ただし、賃借権を相続する場合には賃貸人の承諾が不要という違いは、現在も残っています。相続人以外の人へ遺贈する場合は、登記が単独申請できないうえ、農地の許可(農地法3条)や不動産取得税の負担も生じるため、遺す相手が相続人かどうかによって、使い分けを検討する必要があります。

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