不動産相続の相談窓口コラムVOL.76|相続人の廃除とはどのようなものか|株式会社マトリックストラスト不動産相続の相談窓口
相続人の廃除とはどのようなものか
遺言書は、被相続人の最後の意思表示と言えます。財産の分割方法や、特定の財産を特定の相続人に相続させる旨を記すことで、自身の希望通りに財産を次世代に承継できますが、例えば「次男だけには財産を渡したくない」という場合の意思表示はどのように行えばいいのでしょうか。今回は、このような場合に活用できる「相続人の廃除」についてお伝えします。

❏相続人の「廃除」とは?
特定の相続人に財産を渡したくない場合は、遺言によって他の相続人への相続分の指定などを行うことで、その相続人に財産を取得させない内容の遺言を作成することはできます。ただし、その相続人が遺留分権利者である場合には、遺留分侵害額請求を行うことがでます。相続人の廃除は、この遺留分侵害額請求権と相続権を失わせることで、相続人の地位から除外する制度です。ただし、「気に入らない」「性格が合わない」といった理由で廃除できるわけではありません。廃除の要件は、民法で以下のように定められています。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
民法893条により、被相続人が遺言で廃除の意思を示した場合、遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に廃除を請求し、効力は死亡時にさかのぼって生じます。つまり、虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合、被相続人は生前に家庭裁判所へ廃除を請求するか、遺言で意思表示することで、その相続人の相続権をはく奪できます。なお遺留分を有しない兄弟姉妹は廃除ではなく、遺言で他の相続人に財産を相続させる意思表示をすることで、財産を渡さないようにできます。

❏ どのような場合に該当するのか
廃除は家庭裁判所によって認められる必要がありますが、どのような場合が虐待・侮辱・非行に該当するかは裁判所の判断に委ねられます。例えば、被相続人への暴言、多額の借金を繰り返し返済させる行為、暴力、不動産の無断売却などが挙げられます。ただし司法統計上、廃除が認められるのは2割程度にとどまり、ハードルは高いのが実情です。家庭裁判所は、双方へのヒアリングなどを経て慎重に判断します。遺言による廃除の場合は、遺言執行者が請求します。審判確定日から10日以内に、廃除される人の本籍地または届出人の所在地の役場へ、審判書謄本・確定証明書とともに廃除届書を提出し、戸籍に「推定相続人廃除」と記載されます。廃除は被相続人本人が家庭裁判所に請求すれば取り消せます(廃除された人自身は請求できません)。

❏ 他の相続人などへの影響は
廃除された相続人がいる場合、他の相続人への影響は、その人に子や孫がいるかどうかで変わります。まず、子などがいる場合は、代襲相続人として財産を受け取ることができます。廃除された相続人には財産は渡りませんが、その子や孫には財産が渡ります。廃除の効力はその相続人のみに及び、代襲相続の権利には及びません。この場合、廃除された相続人に代わって代襲相続人が相続人となるため、通常は他の相続人の法定相続分に変動はありません。一方、代襲相続人がいない場合は法定相続人が1人減るため、他の相続人の法定相続分は増えます。なお、廃除された人でも、被相続人が改めて遺贈をすることは可能です。廃除は相続権をはく奪する制度ですが、遺贈を受ける資格までは失わせません。また相続税にも影響し、廃除された人は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の「法定相続人の数」に含まれません。相続放棄者が数に含まれるのとは正反対です。このように、著しい虐待や侮辱、目に余る非行があった場合は、廃除という方法で相続人から除外することができます。こちらも遺言と同じく、被相続人の最後の意思表示と言えるでしょう。ただしハードルは高いため、早めに専門家へご相談ください。

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